「おやすみスズちゃーんっ」
「うん、おやすみー」
にへら、と笑って自分の部屋に入る。
ベッドまで歩いたところで途端に力が抜けた。ブルーグレーのシーツが目に入る。
ああ。叫んでしまえたらいいのに。
" 僕はいつか、消える―― "
ひゅっ、と息を呑んだ。けれど叫び出そうとした声を自分の首を絞めて止める。
咄嗟に首を掴んだ片手には思いのほか力が入っていたようで、爪が皮膚を破った音がした。
瞬きもせず。息もせず。しばらく動かないまま、その"恐怖"をやりすごした。
手を離すとすぐに息を吐く。切れ切れの息を整わせることさえ億劫な気がした。
・・・・・・嘘ではない、と。
背中合わせにした後ろから聞こえる声が、如実に語っていた。
消える。修復もできない。しぬ。終わる。すべて。
消える。
カヲル、が。存在しなくなる、と。・・・・・・なんで。何故。なあ。
いやだ。考えたくない考えたくない考えたくない考えたくない考えたくない!
どうして――僕はいつか消える僕はいつか消える僕は消える僕消える消える消える消え消
ブツッ
血が飛んだ。
手の平を貫いたコードがだらりと垂れ下がっている。
心臓がドクドクと無意味に忙しく働いて、整っていたはずの呼吸が嫌に乱れていた。
痛覚。痛覚。痛覚。痛み。その一点に集中していないと気が狂いそうで。
でもどんなに激痛を走らせたとしても、結局、浮かんでくるのは――
" スズちゃん "
「ちくしょうッ・・・・・・!」
こんな、汚い血液なんかより。ずっとずっと流したかったのは、
涙。
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