01. side/suzuha
血の匂いが風にそよぐ。火の粉の弾ける音。久しぶりに帰ってきたと感じた。
思わずそれをぽつりと漏らしたら、すかさず紅月に小突かれた。
「何言ってんだ。お前の帰る場所なんかじゃねーよ。ココは、な」
暗に帰る場所は別にあると言い含ませているのがわかる。黙って頷いた。
……けれど、戦場(ココ)がオレの存在の本懐であるということも事実。
オレがオレである理由。
ったく冗談じゃねえよな、めんどくせえ、と紅月が呟くのを聞きながら。
乾いた空気を肌で懐かしむ。
目を閉じ。
すぐに開けて。
行くか、という声に返事代わりの一歩を踏み出す。
敵意、殺意、敵の矛先が反応するテリトリーの一線を越えれば。
瞬時に、それは始まる。
視線。気配。息遣い。切迫する。弾丸。刃の軌跡。増長する自身の、純粋な、殺意。
「――ッ、……」
右肩を貫く冷たさ。追って痛覚が呼び起こされる。
鋭く硬質な感触が骨を掠めて肉の間を貫通している――ああ、本当に久しぶりに感じる、
これは
鉄の感触
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