夜空は星の涙を流す
放課後の屋上は曇り空の下で、閑散とした微風に吹かれていた。もうすぐプールへと変えられるこの場所。今日、また翔と二人でいる場所。日が出ていないから、いつもの日陰には座らずに屋上を一周するフェンスへ寄りかかった。
翔は隣にいる――いつかはいなくなるのだろうけれど。
「・・・・・イチゴ、」
「ポッキーならあるよ」
「反応速いね、さすが」
まぁね、なんて言って翔は微笑する。満面の笑みとかいうのは見たことがない。そして多分、オレも見せたことがない。ああでも、勿体ないな。翔はきっと凄く綺麗に笑うんだろうに。
たまに見せる、歪んだ笑み。自嘲した笑み。作られた笑みはよく見る。
そしてそのどれもが、いつもどこか愁えるような色を帯びて瞳を翳らせていた。
翔の瞳は夜空みたいだと思う。
色が、というわけではなくて。翔の持つ空気が翳る瞳に夜空を作るから。その瞳の奥に秘めているものも微光を放つ星となって、密やかに存在している。何を想っているのかは知らない。誰もが闇を持っていることを知っているだけで。でも翔の持つ闇はどうしてか、綺麗だと感じるから。
「もっと笑えばいいのに」
笑顔から作られる夜空は、微光を放つ星も姿を変えて一等星みたいに輝くんだろう。重い感情を抱えた暗い夜空もいいけれど、そっちの方もきっといい。
「・・・・・そう言われても、特に笑えることなんてないし、ね」
そっか、と軽く返事をしてイチゴのチョコでコーティングされたポッキーをかじった。あ、爪が欠けてる。蹴り飛ばされて床を引っ掻いた時にでもやったのかな。そういえば、こないだは翔も殴られてたっけ。頬が赤かったな。・・・・・・助けたりなんかしなければよかったのに。でも、翔はきっとアレでよかったんだろう。
翔がそれで満たされるなら。望ましくない展開だろうと、友情と紙一重の偽善だろうと、利用価値に挿げ替えられた義憤でも“人間らしい”その純粋で混濁した感情は、受け入れたい。真っ直ぐな屈折で描かれているそれが、愛しい。
「かける」
「ん?」
「あっち向いて」
いいけど・・・・と横を向いたそこへ、キスを落とした。
あの日、赤くうっすらと腫れて熱を孕んでいた場所へ。
珍しく呆気にとられたような表情をしている翔に笑みだけ見せて、知らん振り。
別にお礼というつもりはないし、でも気まぐれでもない。
強いて言葉で表すなら“証”というやつだろうかと思いながら、何となしに小さく歌を口ずさんだ。
Searching for a place where I belong (居場所を探して)
I'm caught in between (どっちつかずの所へ陥ってしまった)
Every right's gone wrong now (素晴らしかったことがすべて今はもうダメになって)
Waiting for the day I see the sun (太陽に出会える日を待っている)
And I'm reaching, am I reaching in vain? (手を伸ばしてはいるけれど この手は虚しいだけだろうか)
fin.
+++++++++++++++++++
スズはかけるんをどう見てるかという。それだけなので短いっす。
涼羽には綺麗に見える(・ω・)
それぞれ、陽だまり=葵ちゃん、淡雪=カヲル、夜空=かけるんのイメージでした。
ユリヤ
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